賃貸経営において契約形態の選択は、収益性やリスク管理に大きく影響します。その中でも「定期借家契約」は、近年あらためて注目されている契約方式のひとつです。さらに昨今は物価上昇、いわゆるインフレの影響により「賃料の見直し」というテーマも避けて通れなくなっています。賃貸管理の現場から、定期借家契約のメリット・デメリットに加え、インフレ下での賃料戦略、そして建物建替えを見据えた活用方法について解説いたします。

定期借家契約とは

定期借家契約とは、あらかじめ定めた契約期間の満了によって契約が終了し、原則として更新がない賃貸借契約です。通常の普通借家契約では、正当事由がない限り貸主からの解約は難しい一方、定期借家契約では期間満了により確実に契約を終了できる点が特徴です。


定期借家契約のメリット

①契約終了時期をコントロールできる

最大のメリットは、貸主側で使用時期を計画できる点です。将来的な売却や自己使用はもちろん、「建物の建替え」を予定している場合にも非常に有効です。普通借家契約では、建替えを理由とした立退きには高額な立退料や長期の交渉が必要になるケースが多く見られますが、定期借家契約であれば満了に合わせてスムーズに全戸明け渡しを実現しやすくなります。

②賃料見直しのタイミングを確保できる

インフレ下において重要なのがこの点です。普通借家契約では賃料増額はハードルが高く、実務上は据え置きになりがちです。一方、定期借家契約では契約期間ごとに条件を見直せるため、市場賃料に合わせた調整がしやすくなります。物価や周辺相場が上昇している局面では、収益維持・向上に直結するポイントです。

③短期運用と建替え準備の両立が可能

建替えを数年後に予定している場合、「空室のままにしておくのはもったいないが、長期契約は避けたい」というケースが多くあります。そのような場面で、定期借家契約を活用することで、収益を確保しながら計画的に建替え準備を進めることが可能です。いわば“出口を見据えた収益確保”が実現できます。

④トラブル入居者の長期化を防げる

契約満了で確実に関係を終了できるため、マナー違反などの軽微な問題がある入居者でも長期化を防ぐことが可能です。このように、オーナー様にとっては、定期借家契約にはたくさんの利点があります。


定期借家契約のデメリット

①入居者が限定される

「更新がない」という特性から、長期入居を希望する層には敬遠されがちです。特にファミリータイプでは募集が難しくなる傾向があります。建替え前提の場合は特に短期契約となるため、ターゲット設定(単身・法人・短期利用者など)が重要になります。

②賃料設定がシビアになる場合がある

定期借家契約は敬遠される分、賃料をやや抑える必要が出るケースもあります。ただし「建替えまでの期間限定」「短期入居可」などの打ち出し方次第では、ニーズに合致し早期成約につながることもあります。

③手続きの煩雑さ

事前説明書面の交付など、通常の契約よりも手続きが増えます。特に建替え前提の場合は、「いつまで住めるのか」を明確に説明し、トラブル防止に努めることが重要です。定期借家契約を利用する場合はこれらをの注意点を十分に理解したうえで、運用することおススメします。


事例:建替えを見据えた定期借家契約の活用

最後に、実際に当社であった事例をご紹介します。

築古テナントビルを所有されているオーナー様で、「建替えを検討しているが、それまでの運用に悩んでいる」というご相談をいただきました。従来は普通借家契約で募集していたため、長期入居が増えると建替え時の立退き負担が大きくなる懸念がありました。

そこで、新規募集の際は定期借家契約で運用を進め、全室を定期借家契約とすることができました。今後は、安心してじっくりと建替え計画を準備することができるようになりました。オーナー様は、「立退きに関する手間や費用の心配がなくなってよかった」と、喜んでいらっしゃいました。


定期借家契約は“出口戦略”とセットで考える

このように、定期借家契約は「契約終了の確実性」「賃料見直しの柔軟性」に加え、「建替えを見据えた計画的運用」ができる点で有効な契約形態です。

一方で、募集難易度やターゲット制限といったデメリットもあるため、物件ごとに戦略的な判断が必要です。「いつまで保有するのか」「建替えや売却の予定はあるのか」といった中長期視点での設計が重要になります。

セゾンハウスでは、エリア特性・市場動向・将来計画を踏まえ、最適な契約形態と賃料戦略をご提案しております。建替えを見据えた運用や、インフレ下での収益改善にお悩みのオーナー様は、ぜひ一度ご相談ください。将来を見据えた一手が、安定した賃貸経営につながります。