昨年末、「“滞納者追い出し条項”が最高裁で無効と判断」というニュースが話題となりました。「これからは家賃滞納者を退去させられなくなるのでは」と不安の声も上がりましたが、ご安心ください、正規の手続きを踏む限り悪質滞納者の排除は引き続き可能です。判決のポイントを確認します。

ポイント①「保証委託契約」による追い出しは無効

アパート等の賃貸は、賃貸人と賃借人で交わす「賃貸借契約」によって成立し、その中で滞納や契約解除、建物明け渡し等が発生します。一方で、今回争われた”追い出し条項”は、賃借人と家賃保証会社で交わす「保証委託契約」の話であり、そもそも賃貸人(≒賃貸経営者)に直接の影響がある裁判ではないのです。

今回の裁判は保証委託契約が賃貸借契約に干渉し、「3ヶ月以上の滞納で保証会社が賃貸借契約を無催告解除できる」とした条項が争点。最高裁は、賃貸借契約の解除は賃貸人によってなされるべきであり、催告もなく保証会社によって契約が解除となる条項は無効と判断しました。

ポイント②明け渡しには訴訟等の法的手続きが必須

通常、滞納者が自ら部屋を明け渡してくれない場合には法的な手続きが必要です。しかし、今回の保証委託契約では、上述の「無催告解除」のほか、「滞納2ヶ月・音信不通・電気、ガス、水道の長期未使用といった状況があれば部屋の明け渡しと見なす」と、保証会社が法的な手続きなく部屋の明け渡しを実現できる内容となっていました。

これについては一審でも、法に則らない「自力救済」を認める内容であると指摘されていましたが、最高裁も消費者の利益を一方的に害するとして無効と判断しました。

不安を煽るような刺激的な見出しが飛び交った今回の騒動ですが、判決はあくまで借地借家法に準じた手続きを求めるものであり、滞納に対する家賃保証会社の役割を全否定するものでもありません。万一の際には家賃保証会社や管理会社と協力しながら、従来通りの手続きを進めていきましょう。