日銀による長期金利の変動幅拡大の容認を受けて、住宅ローン「フラット35」の最低金利も9月・10月と2か月連続の上昇。市場では金利上昇リスクへの警戒がじわじわと強まっています。不動産投資ローンへの影響も懸念される中、賃貸経営者として押さえておきたいのが「DSCR」という投資指標です。

返済能力・投資の健全性を簡易判断

DSCR(Debt Service Coverage Ratio)とは、不動産投資など“借り入れを伴う投資”において、返済にどの程度の余裕があるかを判断する指標です。さほど難しい計算は必要なく、年間売上から運営費等を引いた純収益を、年間の元利金返済額で除すことで算出できます。

DSCR = 1年間の営業純収益 ÷ 1年間の元利金返済額

例えば、年間の家賃収入400万円・運営経費100万円の物件で、毎年200万円を返済しているとしたら、その物件(≒投資)のDSCRは(400万円-100万円)÷200万円=1.5となります。つまりDSCRは、純収益が元利金返済額の何倍あるかを示しているわけです。

返済に対して収益が十分にあるほどDSCRは大きくなり、返済の余力がないほど小さくなります。DSCRが1.0を割るということは、借入金を収益から返済できずに手出しがある状態です。一般に、賃貸経営ではDSCRの1.2以上の確保を目指すべきと言われ、金融機関も融資審査の参考とするほか、融資条件として「DSCRの1.5以上の確保」等の要求をすることがあります。

適切な借り入れバランスで安定経営

DSCRが低下する要因は、空室の発生等に伴う「収益の減少」と、金利上昇等による「返済額の増加」です。返済額を減らすことでDSCRの値を改善する場合の具体策は、借入期間を延ばす交渉、または金利の安いローンへの切り替えのどちらかでしょう。

もちろん売買差益を狙った投資や複数の物件でカバーし合う投資など、物件単体のDSCRが問われないケースもありますが、DSCRという指標を参考に、借入金と上手な付き合い方や、自身にとってベストな投資バランスを模索してみてはいかがでしょうか。