2023年が始まりました。昨年はコロナ禍に加え、ウクライナ危機や相次ぐ物価高など不安の多い年となりました。しかし、その中でも不動産業界は活況を見せています。新年らしく、この一年で話題となった景気のいい不動産ニュースをまとめてみました。

若手参入で活性化する不動産投資市場

不動産投資の近年の盛り上がりを裏づけるニュースのひとつが、収益物件ポータルサイト「楽待」の会員数の増大です。販売物件情報から投資家向けセミナー、経営ノウハウまで、不動産投資に関するさまざまな情報が手に入る同サイトの会員数は、2017年に10万人を超え、2022年には30万人を突破。ここ数年で不動産投資に関心を持つ人が急増していることが分かります。

会員の属性(2020年調査時)は「会社員」が最も多く60%以上を占め、次いで会社役員・経営者と個人事業主がそれぞれ10%ほど、専業大家は1%という結果に。年齢も30~40代が最多で、会員数急増にはサラリーマン大家の存在や、FIRE(Financial Independence, Retire Early)と呼ばれる”経済的自立と早期退職”を目指す人々の影響がありそうです。

賃貸経営のライバルこそ増えるものの、熱量の高い若手の流入による業界の活性化や、投資ブームの長期継続が期待されます。

不動産価格の高騰、円安で海外マネー流入

首都圏を中心に、不動産価格も右肩上がりの上昇を続けています。国土交通省発表の「不動産価格指数」を見ると、2020年以降は宅地・戸建て・マンションの3種類全てが上昇傾向。とりわけマンションの上昇幅は大きく、2010年比で約1.8倍に達しています。資材等の高騰に伴う建築費の増大が主な要因ですが、それを購入する側の意欲も旺盛です。

一方、昨年は日本が「歴史的円安」に苦しんだ年でもありました。一時は円相場1ドル=151円台後半まで値下がりし、これを好機と捉えた海外投資家の進出が不動産市場でも加速しています。こうした状況は前述の不動産価格の高騰にも拍車をかけ、物件購入のハードルは一段と高くなると予想されますが、海外からの投資の増加は市場の賑わいにもプラスに働きそうです。

相続対策でも注目。不動産小口化商品ブーム

不動産価格の高騰もあってか、新たな投資手法として人気を集めるのが「不動産小口化商品」です。一口あたり数万円~数百万円の小口に分けられた不動産投資商品で、金融機関の融資を受けなくとも、少額から高額な不動産に投資することができます。似たような投資にREIT(不動産投資信託)がありますが、ファンドに対して投資をするREITと異なり、好みの物件にピンポイントに投資できるのも小口化商品の魅力です。

昨今は上記のようなメリットに加え、相続時に分けやすいこと、また「任意組合型」と呼ばれる小口化商品であれば実際に不動産の所有権を持つことになり、相続税評価減による相続税対策にも使えることなどを理由に購入者が増加。今年も一層注目が集まりそうですが、まだまだ過渡期の商品であること、投資先物件は玉石混交である点には注意が必要です。

メタバースの不動産取引額1000億円超か

2022年は仮想空間「メタバース」も大きな話題となりました。メタバースとは、参加者が自由に行動できるインターネット上の三次元空間・もう一つの社会活動可能な世界のこと。既にゲーム業界では馴染み深い概念で、世界的ヒットを記録した「あつまれどうぶつの森」(任天堂)も広義のメタバースと言われます。

最近は仮想空間で教育、医療、ゲーム等の多様なコンテンツが提供されるほか、街づくりのための”不動産取引”も拡大。2022年のメタバースでの不動産取引額は1000億円を超えるとされ、日本の大手各社も動き始めています。仮想空間なら土地建物の取引の可能性は無限大。しかし、仮想不動産である故に価値判断の基準や法律づくりが追いついていないなど、参入リスクの大きさについても未知数です。

入国者数の上限撤廃で 外国人入居ニーズ再び

コロナ禍による入国制限で一時は激減した在留外国人ですが、世界的な規制の見直しにより日本の水際対策も大きく緩和されました。2022年10月には、1日5万人の入国者数上限がようやく撤廃に。出入国在留管理庁も、在留外国人の数が減少から増加へと転じ、コロナ禍前の規模に戻りつつあることを発表しています。今後も入国制限は緩和される見込みであり、外国人の賃貸需要も大幅な回復が期待されます。

郊外住み替え・多拠点生活のニーズ高まる

ここ数年のコロナ禍の影響で関心が高まっているのが「郊外住み替え需要」です。LIFULLが発表した「2022年 借りて住みたい街ランキング」の首都圏版でも、上位5駅は23区内ではなく、いずれも郊外エリアが独占(※)する結果となりました。

加えて、新しい暮らし方として注目される「多拠点生活」も、郊外志向の加速の一因となっていそうです。テレワークを筆頭とした働き方の多様化により、「休暇を兼ねてのんびりとした田舎や観光地で働く」というワーケーションなど、仕事・プライベートの事情に応じて住む都市を変える暮らし方が現実のものとなり、第二の拠点を探す人々が増加。

最近は、田舎に土地を買ってキャンプや古民家生活を配信するYouTube動画も人気であり、今年も仕事や遊びの拠点を求める若者を中心に、地方物件に注目が集まりそうです。
※1位から順に、本厚木、大宮、柏、八王子、西川口

各方面からの新しい動きで業界が賑わうニュースが集まった2022年。2023年も更に明るい話題が続く一年になると期待しましょう。