賃貸経営において「立地」や「家賃設定」はもちろん重要な要素です。しかし、同じ立地・条件であっても入居希望者が契約するかどうかを大きく左右するのは、意外にも管理状況であることを忘れてはならないでしょう。

入居希望者の目線を意識する

第10回首都圏賃貸住宅市場における入居者ニーズと意識調査によると、「管理状況を重視しており、物件見学時に確認している」と答えた人は全体の49.2%。さらに「重視しているが、見学時には確認していない」を合わせると7割近くに達する結果となっています。つまり、入居希望者の多くが管理状態を重要な判断材料としているということがわかります。

空室改善というと、物件の室内のデザインや、最新の設備ばかりに目がいってしまいがちですが、入居希望者の目線に立ち、実際に案内をされて現地確認をする行程を思い浮かべながら、問題点を改善していく必要があるでしょう。

同調査では、「管理状況のどこを見るか」という問いに対して、ゴミ置き場の状態(89.9%)、玄関・廊下の汚れ(88.9%)、郵便受けの状態(88%)、共用部の傷み具合(86.3%)、外構の傷み具合(84%)といった項目が上位を占めています。つまり、物件の案内時に、物件現地に降り立った瞬間から目に入るポイントをチェックしているのです。

ゴミ置き場・玄関廊下の汚れ・郵便受けの状態からは「他の入居者はどのような生活態度なのか」また、共用部・外観の傷みや汚れからは「自分が住む家のレベルや状態、または安全性」を感じ取ることができます。これらの管理状態が、入居希望者にとって評価の大きなポイントとなっているのです。


入居希望者の心理一準予選・予選・決定戦の流れ

物件見学(内見)をスポーツの試合に例えてみましょう。

準予選…現地到着直後に建物全体を見回す段階
●予選…室内を見学し、生活イメージを膨らませる段階
●決定戦…他物件との比較を経て、申込・契約を決める段階

この「準予選」でマイナスの印象を持たれると、その後室内を見学しても心は既に離れてしまっているため、「決定戦」に進める可能性は限りなく低くなるのです。

満室だから、の油断の危険性

また、共用部の美観·清掃は新規入居者募集に影響するだけでなく、既存入居者の満足度維持にも直結します。「満室だから少しぐらい汚れていても大丈夫」との油断が、既存入居者のストレスを生み、入居率の低下につながることも考えられます。

次回は、第一印象を左右する管理改善の具体策について考えていきます。(後編へ続く)