賃貸入居者の安否確認 ~管理会社・オーナーが知っておくべき対応と注意点~

こんにちは、セゾンハウス資産管理部です。

地震・台風・大雪などの災害発生時や、長期間連絡が取れない場合など、
賃貸物件の入居者の安否確認は管理会社・賃貸物件のオーナーにとって重要な業務です。

一方で、対応を誤るとプライバシー侵害やトラブルにつながる恐れもあります。
トラブルになる前に、賃貸管理の現場で押さえておくべき事項をお話します。

「安否確認の考え方」「具体的な対応手順」「注意点」を次に挙げてみました。

1.賃貸物件にて安否確認が必要となる主なケース

1-1 災害発生時のケース

  • 地震・台風・豪雨・大雪などの自然災害
  • ライフライン停止が長期化している場合
  • 建物被害が確認されている場合

1-2 日常管理でのケース

  • 家賃滞納と同時に長期間連絡が取れない
  • ポストや部屋の前に郵便物や新聞が大量に溜まっている
  • 異臭・異音など、周囲からの通報があった場合
  • 家族や関係者から安否確認の問い合わせがあった場合


2.安否確認時の基本的な考え方

2-1 入居者の安全確保が最優先
人命・安全を最優先に判断し、緊急性が高いと判断される場合は、自己判断で抱え込まず、警察・消防などの公的機関と連携することが重要です。

2-2 プライバシーへ十分配慮する
賃貸管理会社やオーナーだからといって、無制限に居室に立ち入りする権限はありません。「心配だから」という理由だけで、入居者の許可なく無断で入室することは、原則避けるべきです。


3.安否確認の対応手順

以下の手順に沿って、慎重かつ迅速に対応します。

3-1 電話やメール、ラインやSMS、管理アプリで連絡を行う
連絡手段の例として、登録されている電話番号への架電、メール・管理アプリでの安否確認通知、災害時の一斉送信などを実施します。(※履歴を残すことが重要です。)

3-2 緊急連絡先への連絡を行う
入居時に提出されている、緊急連絡先(親族等)へ状況を説明し、安否の確認を行っていただきます。この際には、災害発生状況や管理会社として把握している事実のみを伝え、憶測は避けます。

3-3 建物・室外からの状況確認を行う
郵便受けに郵便物があふれていないか、電気・ガス・水道メーターに異常がないか、共用部から確認できる異臭や異音などの異変の有無などです。(※この段階では室内への立ち入りは行わないのが原則です。)

3-4 警察・消防への相談と立ち合い要請
緊急性や必要性があると判断されたならば、立ち会い要請を行います。警察・消防の判断のもと、立ち会いでの開錠・室内確認を行いましょう。


【例外的な無断入室が認められる可能性のあるケース】
原則的に無断入室は禁止されていますが、以下のような場合は例外として、認められる可能性があります。

  • 著しいガスの臭い・漏水などで他の入居者に危険が及ぶもの
  • 警察・消防などの公的機関の要請・立ち会いがある場合
    (※無断入室の場合は、必ず写真・記録を残し、複数人で対応することが重要です。)
  • 入居者の生命の危険が差し迫っている言動がある場合


4. 家族からの安否確認依頼があった場合の注意点

ご家族であっても、安易に個人情報を伝えてはいけません。

  • 情報開示の制限:親や子供、兄弟姉妹であっても、入居者本人の同意がない限り、詳細な生活状況を伝えてはいけません。
  • 伝えるべき情報:「連絡が取れていない事実」「管理会社の対応状況」のみを説明しましょう。
  • 厳禁事項:誤解を招きますので、憶測で話すことは厳禁です。勝手に合鍵を渡したり、入室を許可したりはできません。(※トラブル防止のため、対応内容は必ず記録します。)


5. 【事例】入居者と連絡が取れないケース

先日も、「アパートに入居している息子と連絡が取れなくなってしまった。」と、入居者のご両親からお電話がありました。詳しくお話を伺うと、「3日間も職場を無断で休んでいる」、「3日ほど前から連絡が取れていない」、「最近は不安定な言動があった」とのことで、とても心配している様子でした。

早速、入居しているお部屋を訪問しましたが、特に応答はなく、2階のため窓から室内を確認することは難しい状態でした。そこで、警察へ連絡し、警察官立ち会いのもと、お隣の部屋のベランダから室内の状況を確認しましたが、カーテンがあり中の様子を窺うことはできませんでした。

そこで、最終手段として、オーナー様・緊急連絡先の方の承諾をいただき、警察立ち合いのもと、玄関の鍵を開けました。結果は、いろいろ手配して玄関ドアの開錠を行った甲斐はむなしく、室内には入居者の姿はありませんでした。

そこで、ご両親がご子息の行方不明申請を警察へ行い、捜索の結果を待つこととなりました。この時、オーナー様は入居者の生命に万が一のことが起きたらと、とても心配されていらっしゃいました。翌日、無事保護されたと警察より連絡があり。今回の件は、大事には至らず、皆ひとまず安心し、終了となりました。


このような入居者リスクが、賃貸経営ではたまにあります。では、このような事態に慌てず、迅速に対応できるような予防策を考えてみましょう。


6. 入居時・更新時にできる予防策

このような事態に慌てず、迅速に対応するための予防策として、以下の対策を推奨します。

①緊急連絡先は必ず取得・更新しましょう
②災害時の連絡方法を入居者に知らせましょう
③契約時に合鍵での開錠のルールを、入居者へわかりやすく説明し理解いただくようにしましょう。


7. まとめ

先ほどの事例以外にも、「高齢の父母と連絡がとれない」、「1週間ほど昼夜を問わず電気が点いているし、テレビがつきっぱなしのようだ」等、入居者の家族や、近隣の方から、セゾンハウスへ連絡が入ることがあります。オーナー様も、このような連絡が来ると、いろいろなことを考えてしまい、不安になられます。

でも、ご安心ください。セゾンハウスはこのような事態に備え日頃から管理体制の整備を行っております。いざ安否確認が必要となった際は「慎重さ」と「迅速さ」が重要です。

繰り返しとなりますが、貸入居者の安否確認は、迅速な判断と法的・倫理的な慎重さの両立が求められる業務です。「むやみに踏み込まない」、「放置しない」、「記録と連携を徹底する」などです。この姿勢が、入居者の安全を守り、オーナー自身を守ることにもつながります。

セゾンハウスでは、賃貸住宅の満室経営のお手伝いはもちろんのこと、入居者が起こしてしまう様々なリスクへの適切な対応を行うことにより、オーナー様が安心して賃貸経営に専念できるような体制を整えております。 


セゾンハウス資産管理部 T・M