5月の大型連休を過ぎると、残念ながら賃貸業界は閑散期に入ります。早期に空室を埋めるにはバリューアップが欠かせませんが、入居者のニーズは多様なだけに「どの空室対策から手をつけるべきか」は迷うところです。

そんな悩める賃貸経営者の参考となりそうなのが、2月にアットホーム株式会社が発表した「不動産のプロが選ぶ!一人暮らしで妥協できる住まいの条件・設備ランキング」です。調査結果に見え隠れする”プロの本音”を、閑散期の空室対策に活かしましょう。

妥協のススメから営業トークが想定できる

同調査のポイントは、何と言っても入居者と直に接している不動産会社の営業担当者が、一人暮らしの希望者に向けて「妥協しても大丈夫な条件・設備」を回答している点です。これは裏を返せば、「私はこの条件(または設備がない)でも問題なくお客様にお部屋をオススメしますよ」という営業担当者の意見表明。妥協可能条件のトップ3は次のとおりでした。

不動産のプロが選ぶ!一人暮らしで妥協できる住まいの条件・設備ランキング


このように多くの営業担当者は、築古や木造、ガスコンロなどをあまり問題視せず、「いいお部屋ですよ」と案内していることが分かります。

しかし、だからといって「うちは古いけどそのままで大丈夫」と安心するのは早計です。賃貸経営者が重視すべきは、ランキング上位よりもむしろ下位。つまり、営業担当者が「ここは妥協しないほうがいいですよ」とお客様に注意を呼びかけているかもしれない項目です。同ランキングの下位、妥協を勧めない条件・設備は次の通りです。

条件の16位・内装のデザイン、12位・セキュリティを上位条件と組み合わせると、予想される営業トークは「内装がキレイで、モニタ付インターホン等でセキュリティ面もカバーできているなら、築年数は妥協しても大丈夫ですよ」といったところでしょう。「築古でも大丈夫」は、あくまで「○○なら」という条件付き。その条件を満たしていない物件は、不動産会社としても営業トークに困るのです。

バリューアップは「妥協できないところ」優先で

そうなると、空室対策の優先順位もはっきりします。内見を勝ち取るなら、以下のような観点から営業担当者が自信をもって紹介できる部屋を目指しましょう。

内装対策

内装の一新となると大規模なリノベーションをイメージしますが、床・壁紙等の目につきやすい箇所だけの刷新や、和室の洋室化といった工事であれば、平米あたり1.5~2万円が目安。単身向けなら40万円程度で実現可能です。

セキュリティ

オートロック導入はコスト面で難があるものの、せめて前述のモニタ付インターホンや、”置き配”の盗難リスクを下げられる宅配ボックスの導入は検討したいところ。前者は戸あたり3~5万円程度、後者は集合ポストに2個設置で20万円程度です。

若年層対策

一人暮らしの主体が若者であることを考えると、彼らの「妥協できない」への対策も欠かせません。例えば15位・温水洗浄便座は一般世帯普及率80%超で、実家暮らしだった若者には必要不可欠の設備です。また、ランキング項目には含まれていないものの、若年層には室内洗濯機置き場も当たり前の条件。外置きの場合は高い優先度で対応を考えるべきでしょう。