全世界で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症(以下「コロナ」)。日本でも特に観光や飲食業界が大きな打撃を受けていますが、賃貸業界も例外ではありません。果たしてどんな影響が出ているのか、肌感覚だけでなく調査データ等から検証してみましょう。

反響・来店数は減少、入居時条件交渉は増加

賃貸市況について調べる際、参考となるのが日本賃貸住宅管理協会の公表している「日管協短観」です。この日管協短観では、賃貸管理会社へのアンケート結果から業況判断指数(DI値 ※1) を算出し、その推移をもって賃貸市場の景況感を可視化しています。 その日管協短観、最新版はコロナ騒動が本格化しつつあった春の引越しシーズンを含む2019年10月~2020年3月が対象。そして結果は、予想通り非常に厳しいものとなっていました。

ご覧の通り、反響・来客・成約とも全ての項目が昨年同期より悪化しています。来客では特に法人、外国人のマイナスが顕著であり、またオンシーズンにもかかわらず学生、単身の項目も悪化しました。

そして当然、成約件数についても賃貸、売買それぞれ大幅に下降しています。表外になりますが、賃貸・売買の仲介手数料、リフォーム関連の売上についても多くの会社が「減った」と回答。コロナによって外出が自粛された結果、部屋探しの活動や店舗への訪問数も減少し、最終的には不動産の取引数自体が大幅に減少してしまった形です。

一方で、このコロナの時期に「増加」した項目もあります。それは、入居時の賃料や初期費用、設備等の「条件交渉」の項目です。首都圏こそ例年並みだったものの、それ以外の地域では条件交渉が増えたという回答が急増し、3年連続で低下していたDI値が増加へと反転。人の動きが制限される中、賃借人は貸主とのパワーバランスを敏感に察知していたようです。

※1 DI値とは、前年よりも増加(≒良い)と感じている企業の割合から減少(≒悪い)と感じている企業の割合を引いて算出する指数。

日管協短観 https://www.jpm.jp/marketdata/


住まいに「働きやすさ」「籠もりやすさ」の新たなニーズ発生

コロナで増加したものといえば、オフィス以外で仕事をす る「テレワーク」の採用企業です。先日も大手通信系企業がテレワーク・在宅勤務の無制限化を打ち出して話題となるなど、今後も自宅で仕事をするケースば増えていきそうです。

そうなれば当然、住まいのニーズにも変化が表れます。 リクルート住まいカンパニー社が発表した調査(※2)では、「コロナ拡大によって変化した住宅に求める条件」の質問に対し、「仕事専用スペースがほしくなった」「宅配/置き配ボックスを設置したくなった」などの声が上位を占める結果となっています。

仕事専用スペース、遮音性といった項目からは「仕事のしやすさ」のニーズを、宅配ボックス、収納量、広いリビングなどからは「籠もりやすさ」のニーズを感じますが、面白いのはその回答者の年代と家族形態の関係です。

仕事専用スペースを求めるのは圧倒的に20代が多いものの 、単身世帯のニーズは低く、2人以上世帯では高くなっています。また、遮音性については単身世帯が強く望んでいる一方で、2人以上世帯ではそれほど求められていません。つまり、若い単身世帯は「仕事スペースはどうとでもなる。他の部屋からの騒音だけなんとかしてほしい」と考え、2人以上世帯は「まずは室内に仕事のできる空間を確保したい。他の部屋のことは二の次」と考えているのでしょう。

昨今は賃貸でもテレワークニーズを意識したさまざまな空室対策が登場しています。賃貸住宅の先行指標ともいえる購入・建築検討者の調査を参考に、ターゲットによって重点を置くべき部分をきちんと変えていくなど、いち早い打ち手が必要となりそうです。

※株式会社リクルート住まいカンパニー
「コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査(首都圏)」
https://www.recruit-sumai.co.jp/press/2020/06/-8-4222.html

家賃の滞納・交渉の経験3割、要請受諾は約5割

コロナによる滞納関連の影響については、賃貸経営者に向けた実態調査(※3) も発表されています。その結果から分かったのは、5月後半の時点で30.3%の賃貸経営者が家賃の減免・猶予の要請あるいは退去等の影響を受けていた事実です。

要請の内容は、家賃の減額要請が約半数48.5%、退去が35.1%、支払い猶予の要請が25.4%となっており、コロナによる賃借人への経済的打撃が、そのまま賃料支払いや契約継続に影響を及ぼしていることが分かります。

また、賃借人からの賃料減免や遅延の要請に対して、拒絶した方が約9%に対し、受諾した方は約47%と多く、「大家さんはやさしい」という見方ができます。また11%の方は「助成金申請等を勧めた」と回答しており、どちらにせよ賃借人の契約継続を促す賃貸経営者が多い結果となりました。

​しかしながら、コロナ禍の長期化によって賃借人の滞納リスクが上昇していることは間違いありません。慎重な審査はもちろん、保証会社の活用等によって、少しでもリスクを遠ざけていきたいものです。

※3 株式会社オーナーズ・スタイル
「新型コロナウイルス感染拡大が賃貸住宅の大家さん、入居者へ与えている影響 緊急アンケート」 https://www.atpress.ne.jp/news/214395

なかなか終わりの見えてこないコロナ騒動。完全なウイ ルス駆逐が不可能である以上、事業を維持するには工夫してウイルスと戦いながら経営を続けるしかありません。

賃貸業界においても、今回の騒動を機にVR内見や電子契約といった「非対面対応」をはじめ、新しい手法が発生・定着しつつあります。そして新手法の中からは、アフターコロナの「新常識」も登場することでしょう。行動は制限されますが、自由な発想で新しいものを取り入れ、騒動収束後の賃貸経営に備えたいものです!