入居者の入れ替わりが一段落したタイミングは、一年を通じて安定した賃貸経営を行なうための入居者ニーズ把握や戦略策定に最適です。最新の入居者意識調査から、空室対策に役立つヒントを探ってみましょう。

満室稼働のヒント眠る「必須条件ランキング」

まず参考にしたいのは、LIFULL HOME’Sが発表した「住まい探しの絶対条件ランキング2023」です。このランキングは、同社ポータルサイトで物件検索をする際にユーザーが設定した「できれば欲しい」と「絶対に欲しい(必須)」という優先順位の“差”に着目して分析したもの。本当にニーズのある条件だけが抽出された同ランキングには、部屋探しの際の「絶対に外せない必須条件」が並んでいるのです。

とはいえ、絶対条件ランキングの全国トップ10は、上から①バス・トイレ別、②駐車場あり、③室内洗濯機置場、④エアコン、⑤ペット相談可、⑥2階以上、⑦洗面所独立、⑧追焚機能、⑨オートロック、⑩二人入居可、とお馴染みの顔ぶれです。ただし、前年数値と比較した“上昇率ランキング”をみると、2位「追焚機能」、3位「オートロック」が大きく数字を伸ばしており、入居者心理の変化が見られます。



オートロック人気上昇 防犯設備にチャンス

オートロックが伸びた理由として、まず考えられるのは体感治安の悪化でしょう。この一年は闇バイトによる強盗やストーカー殺人など、住まいを舞台とした凶悪事件が多く報道されました。人々が治安への不安感を募らせ、住まいに安全を求めた結果、オートロック人気が押し上げられたと考えられます。

となると、今後はオートロックに限らず、防犯設備全般でニーズが高まっていくと考えられます。「防犯カメラ」「TVモニター付きインターホン」はもちろん、「ディンプルキー」や「防犯フィルム」「補助錠」といった地味な設備も好印象につながりそうです。


追焚きは、家計も助かる必須条件

追焚機能のニーズ上昇には、昨今のエネルギー価格高騰が関わっていそうです。便利であることはもちろんですが、水道代やガス代が節約できて家計にやさしい設備として注目されていると言えるでしょう。

加えて近年の住宅価格の高騰により、購入待機中となったファミリーの賃貸需要が拡大中。単身より追焚きニーズが高いファミリー物件の検索数増加が、追焚機能の順位を押し上げたという見方もできそうです。

ニーズの地域差に注目

このランキングのもうひとつの特徴は、全国47都道府県別の必須条件ランキングも発表されている点です。そのため、気候や商習慣、都市構造等による必須条件の「地域差」が浮き彫りとなっています。

例えば、先ほどの「追焚機能」も温暖な地域ではさすがに順位を落とします。「家具家電付き」は、関東・近畿ではランキング圏外にもかかわらず、その他の道県ではトップ20以内という結果に。「浴室乾燥機」は、ランキング上位に来るのは東京・大阪とその周辺のみで、多くの地域では必須とされていないことが見て取れます。

一方で、地域差がありそうなのに全国共通で絶対視されている、という条件も。中でも「エアコン」は、雪国のイメージの強い北海道・東北で必須条件の2~4位にランクインする意外な結果となっています。札幌でさえ35度以上の猛暑日を記録することが増えており、今後は温暖化や気候変動を加味した設備導入も検討する必要がありそうです。

空室対策の最優先は「映える水回り」

では、空室対策は何処から優先的に手をつければいいのでしょうか。そのヒントになりそうな調査が、アットホームの実施した「オンラインでの住まい探しに関する調査 2023 賃貸編」です。

この調査では、「インターネットで物件を探す際に“必ず見たい写真”は何ですか」という質問に対し、なんと上位4位がすべて水回り設備という結果に。今やネットでの物件検索こそ入居者獲得の主戦場と言われますが、その現場では生活の中心となる居室よりも、水回りの状況が重視されているのです。

そうなると、築古物件にありがちな「バランス釜」や「電気コンロ」「室外の洗濯機置場」などは、入居者獲得の大きな障害に。訴求力回復には「給湯器導入」「IHコンロ」「洗濯機置き場の室内化工事」といった対策が必要でしょう。

また、ネットで部屋探しをする人は、募集写真からできるだけ多くの情報を読み取ろうとするものです。水回りをリフォームできると一番ですが、少しでも見栄えを改善できるよう、キッチン扉を化粧シート等できれいに見せる、水栓やシャワーを取り替える、温水洗浄便座を取り付ける、といった改修を行なうと反響数アップが期待できます。管理会社と相談しながら、「映える水回り」を意識した空室対策を行なっていきましょう。