秋は春に次ぐ第2の引っ越しシーズン。適切な空室対策で入居者獲得のチャンスを生かしたいところです。しかし、部屋探しの方法や入居者ニーズは時代とともに刻々と変化しています。トレンドを押さえ、満室経営への第一歩を踏み出しましょう。

お部屋探しはデジタルで完結傾向に

近年、入居者のトレンドとして注目され、さらにコロナ禍で加速しているのが「部屋探しのデジタル完結」です。21C.住環境研究会と株式会社リクルートが共同で行なう「首都圏賃貸住宅市場における入居者ニーズと意識調査2021~2022年」によれば、インターネットで探した部屋にそのまま住んだ入居者の数は、今や全体の半数以上。さらには、コロナ禍とデジタル改革関連法により普及の進む電子申込や電子契約についても、前者は約4割、後者は約3割が経験しているとのことで、部屋探しから契約手続きまで「デジタル完結」させる層が増加しつつあることが窺えます。

手元のスマートフォンからスタートした部屋探しが、WEB問い合わせ・オンライン接客・オンライン内見を経て、電子申込とIT重説と電子契約によって完了する。一昔前には考えられなかったことが当たり前になりつつある現在、空室対策として押さえておきたいのは、やはり全ての始まりとなる「WEBでの部屋探し」のフェーズです。

実際に不動産ポータルサイトで部屋探しをしてみると、ここ数年での利便性の進化に驚かされます。間取り図等の基本情報だけでなく、写真や動画等の情報も充実しているうえ、複数の物件をピックアップして「家賃の額」「設備の充実度」「外観の良さ」などを比較するのも簡単です。さらにポータルサイト以外でも、物件の口コミや心理的瑕疵の有無、建物周辺の街並みや環境、エリアの治安など、インターネット上で手に入る情報は多種多様。好きな場所で簡単に、スマートフォンやパソコンからたっぷりと時間をかけて物件を選べる時代となってきているのです。

このような状況下では、募集図面や内見時だけの勝負というわけにはいきません。株式会社リクルート発表「2020年度賃貸契約者動向調査(首都圏)」によれば、部屋探しにおける不動産会社訪問数は平均1.5店舗、平均内見数は2.7件と、コロナ禍の影響もあり過去最低レベル。入居者が内見候補をとことん選び抜いて問い合わせてくることを考えると、まずはWEBでいかに入居希望者の目に留まり、内見へと駒を進められるかが、賃貸経営者が考えるべき空室対策のポイントと言えるでしょう。

対策①定番設備で検索条件を強化

ポータルサイトで目立つことを考えたとき、まず検討すべきはサイト掲載時に弱点となり得る「条件」の補強です。

部屋探しでは好みの物件と出会うべく、希望エリアの物件を「検索条件」で絞り込んでいきます。これは条件を満たさない物件を次々と除外していく作業であり、たとえ家賃が予算内で、築年数や専有面積が許容できるものであっても、希望条件をひとつでも満たしていない物件は容赦なく候補からふるい落とされます。

となると、検索結果に残るための最優先の対策は、部屋探しの定番条件をひとつでも多く備えること。デジタルな部屋探しでは、たった1つの設備の有無が明暗を分けることになるのです。「2階以上」「都市ガス」などの改善できない条件や、「バス・トイレ別」「オートロック」などのコストも時間もかかる条件はさておき、どんな部屋でも導入が可能な<設備条件>の見直しは徹底したいものです。

「室内洗濯機置き場」「洗浄機能つき便座」など、定番設備で弱点補強をして足切りリスクを低減すると同時に、「インターネット無料」「宅配ボックス」などの人気設備を導入すれば差別化のポイントに。最新トレンドに注目しつつ、ターゲット層や費用対効果のバランスで優先順位をつけましょう。

対策②外観・見栄えに気を配る

次に気を配りたいのが、所有物件の<ポータルサイト上での見え方>です。せっかく条件面を整えて検索結果に残っても、ライバル物件の中に埋もれてしまっては元も子もありません。

まず目指すべきは、実際の物件の魅力がポータルサイト上で100%伝わること。汚れの目立つ部屋や暗い印象の建物、古臭さを感じる写真では、入居希望者の心に響きません。写真の撮り方の工夫や、色調の補正によってある程度は挽回できるとはいえ、室内であればアクセントクロスやホームステージングの採用、外観であれば定期清掃や植栽剪定の実施など、物件そのものの見栄えを改善する抜本的な対策もご検討ください。

 物件の外観改善策

  • 定期清掃・壁紙張り替え・鉄部塗装
  • 植栽整備・キッチン等の化粧板張り替え
  • ホームステージング
  • エクステリア照明の設置・外壁の塗り替え

対策③入居者の受け入れ条件を見直す

最後に検討したいのが、<入居条件>の見直しです。高齢者や外国籍、ペット可、事務所利用など、受け入れ条件の拡大で短期間での空室解消が叶うことも珍しくありません。また、金銭面での譲歩も効果が高く、初期費用減額キャンペーンや敷金・礼金の引き下げ、フリーレント、期間限定の賃料値引き等のほか、保証会社へ支払う保証料や成約時の仲介手数料など、通常は借主負担としている費用を貸主で負担するといった施策も考えられます。

しかしながら、受け入れ幅を広げることはトラブルリスクを高めることにもなります。効果のある募集戦略についてはもちろん、入居後のリスク対応についても管理会社とよく相談しながら、有効な空室対策を実施していきましょう。