「孤独死」は「事故物件」か、全宅連の見解は?
自殺や病死、孤独死など、賃貸物件内での入居者死亡リスクは賃貸経営者共通の悩みの種です。日本の人口減少・高齢化を考えれば、賃貸住宅における高齢者の受け入れは有効な空室対策、むしろ生き残りのための必須戦略であるものの、万一、孤独死等の発生によって「事故物件」の扱いとなってしまえば、空室が長期間続いてしまう、家賃も相場より下げなければ決まらない、といった状況になりかねません。
そんな中、全国宅地建物取引業協会連合会(以下、全宅連)が「孤独死」について非常に興味深い見解を示したとニュースになりました。全宅連は孤独死について「ただちに『事故物件』となると考えることはできない」と言明したのです。
孤独死≠事故物件が高齢者居住を支援する
全宅連が今年3月の報告書(※)で発表した考え方は次の通りです。
① 孤独死については、原則として説明・告知の必要はないものとする。
② ただし、臭気等によって近隣から居住者に異変が生じている可能性が指摘された後に、孤独死の事実が発覚した場合には、説明・告知をする必要があるものとする。
③ ②の場合であっても、次の借主が、通常想定される契約期間の満了まで当該物件の利用を継続した場合には、貸主は、その次の借主に対し説明告知する必要はないものとする。
④ 媒介業者は、業者としての通常の注意に基づき②の事実を知った場合に限り、上記②③と同等の取扱いをするものとする。
国も高齢者等の住宅確保策として賃貸住宅の活用を推進していますが、事故物件化リスクが障壁となって思うように進んでいないのが現状です。しかし、「説明・告知が必要な孤独死」が定義され、それ以外の孤独死が事故物件として扱われないルールとなれば、高齢者等の居住支援は大きく進展していくことでしょう。
人類史上、類を見ない超高齢化社会を迎える日本。今回の報告書は、世間の孤独死の考え方を変えるひとつの転機となるでしょうか。
※令和2年3月発表
【令和元年度 住宅確保要配慮者等の居住支援に関する調査研究報告書】
公益社団法人 全国宅地建物取引業協会連合会
公益社団法人 全国宅地建物取引業保証協会