湿度の高い夏の時期に気になるのが“におい”。日常生活の中でもにおいの問題には苦労させられますが、そんなにおいが、密かに建物の問題点を教えてくれていることもあります。嗅覚を頼りに物件チェックをしてみましょう。

消えない下水臭は、配管損傷のリスク

キッチンのシンクや洗濯機・浴室の排水口からにおってくる下水臭。空室であれば、排水トラップ内の水(封水)を切らさないよう封水蒸発防止剤を使ったり、ラップで開口部を覆うなどの対策があります。入居中の部屋でにおいの苦情があった場合も、まずは市販の排水管洗浄剤を試してもらうことで多くのケースは解消します。

しかし、「何をやっても下水臭が消えない」という場合には、建物の配管自体に問題が発生している可能性も考慮すべきです。経年によって防臭ゴムキャップが劣化していたり、地震等で配管そのものにヒビやズレが生じていれば、封水や洗浄剤では解決できません。入居者にも協力してもらう本格的な調査が必要な場合もあります。

部屋に漂うカビ臭は、見えない場所が危険

お部屋のカビ臭さは梅雨や台風シーズンには特に目立ちます。大抵はクロスがカビで真っ黒になっていたりと、においの根源はすぐに発見できるのですが、ときどき発生するのが、表面上はカビのダメージなどないように見えるのになぜかカビ臭い、というケースです。

こうしたとき、まず疑いたいのがクロスの裏側や天井裏。湿気や結露の影響によって、石膏ボードや断熱材、構造材がカビで真っ黒というケースもあるものです。また、カビ発生部分の湿気や濡れが、上階からの漏水や給排水管・エアコン配管等からの漏水、雨水の浸入など、放置できない緊急の原因であるケースも。特にこれからの台風シーズン、外壁や屋根のひび割れからの雨水の浸入には要注意です。

異常なにおいは、異常な事態のサイン

共用廊下を歩いてにおいをチェックするだけでも、建物内の問題に気づけることがあります。例えば、生ゴミのようなにおいや腐敗臭が“ゴミ屋敷”の存在を教えてくれることもありますし、排泄物のにおいや動物臭から“規約違反のペット飼育”が見つかる場合もあります。また、滅多にないことですが、嗅いだことのない異様なにおいから、大麻等の違法薬物の栽培や生産、居室内での死亡事故が発見されるケースも。部屋に介入するべきか否かの重要な判断材料になるので、明らかに異常なにおいがした場合には、すぐに管理会社・警察等へ相談しましょう。

獣臭は、物件に大ダメージの可能性あり

ペット臭とは異なる嗅ぎ慣れない獣臭さを感じる場合には、物件に「害獣」が住み着いている可能性があります。建物内に住み着く代表的な動物としてはネズミ、コウモリ、ハクビシン、タヌキ、イタチなど。ネズミをはじめとするげっ歯類は、構造材や電源・電線を齧って建物の劣化や停電等の原因を作りますし、ハクビシン等が屋根裏や床下に住み着くと、糞尿による建物の損傷や異臭が問題に。戸袋などの人の生活圏に住み着くコウモリも糞尿等が問題となりますが、実は「ウィルスの貯水池」の異名を持つ生物で、感染症媒介のリスクが高まるとも。

害獣が住み着くと建物も早いペースで劣化するため、駆除と同時にメンテナンスやリフォームの検討を。また、入居者の安心と健康のため、消毒や忌避剤による再侵入防止処理も必要でしょう。

このようにさまざまなリスクを伝えてくれるにおいですが、感じ方は個人差が大きいうえ、普段からその場所で生活していると異臭に気がつかないことも多々あります。においに異常を感じた場合は、まずは管理会社等に相談し、第三者に同行してもらって事実確認をするのがオススメです。