部屋の解約は就職や結婚といった避けがたい理由が大半ですが、更新時期は「2年経ったし気分転換に引っ越そうかな」という入居者もちらほらと発生します。こうした“なんとなく解約”する層に、賃貸経営者から“更新特典”でアプローチできないものでしょうか。入居者がもっとこの部屋に住みたい、と思うような施策を打てれば、無駄な解約を防ぎ、物件の稼働率を高めることもできるはずです。

「首都圏賃貸住宅市場における入居者ニーズと意識調査2021~2022年」によると、多くの入居者が更新時に次のようなサービスがあったら「嬉しい」と回答しています。

「首都圏賃貸住宅市場における入居者ニーズと意識調査2021~2022年」
(21C.住環境研究会・株式会社リクルート調べ)

広告費や成約までの空室損、修繕費など、新たに募集する際の費用に比べれば、どれも許容できる金額です。小さなコストで入居者の心をつかみ、空室の発生を防げるなら、更新特典は十分に検討できる「空室対策」でしょう。

住み心地改善特典
エアコン洗浄/水回りクリーニング/クロス交換

居住期間に応じて汚れや匂いは蓄積されますが、自費での解決に抵抗のある入居者は多いようで、清掃系の特典は上述のアンケートでも人気です。清潔感のある部屋に生まれ変われば暮らしの満足度も高まり、気分転換の解約も減少。また、気分を一新してもらうという意味では、入居者好みのクロスへの交換も有効。次の募集に先行した交換と考えればコストも見合うはずです。

もらって嬉しいプレゼント
家電/商品券/カタログギフト/防災グッズ、防犯グッズ

誰であっても嬉しい家電や商品券のプレゼント。入居者の好みが分からない場合は、入居者が自分でプレゼントを選べるカタログギフトという手もあります。災害が増えている昨今は、備蓄用の食料や避難時セットなどの防災グッズの特典も効果的。防犯フィルムや鍵交換などのセキュリティ向上策を特典にすれば、安心して長く暮らせると印象づけることもできそうです。

部屋の設備のグレードアップ
温水洗浄便座/モニター付きインターホン/ネット無料

設備が古びていくにつれて物件の魅力も失われていくものです。そして、魅力の低下は早期解約の原因に。その点、今まで「なくて不便だった設備」「あってほしかった設備」が加わりお部屋がグレードアップされれば、入居者の引っ越しをする意欲も薄れます。加えて、新規導入の設備によって次回募集時の集客効果もアップ!

金銭面での譲歩
賃料減/再契約料、更新料減免

更新料のある地域では、その支払いが引っ越しの直接的理由となるもの。周辺相場と現賃料とを比較して、引っ越しを選択する入居者も多くいます。市場で不利な状況であるなら、貸主側から先行して「賃料減額」「更新料減免」といった条件を提示することで、入居者の解約を踏みとどまらせることもできるはず。お金での解決には抵抗感もありますが、新規募集コストよりも低い割引額で更新を獲得できれば、それこそ”儲けもの”です。

特典スケジュールの提示で効果UP

上記のような特典を採用する際、是非実施したいのが「特典スケジュール」の事前提示です。例えば、1回目の更新はエアコン洗浄、2回目は商品券1万円分、3回目は有名テーマパークのチケット…と、将来の「更新する楽しみ」をあらかじめ提示しておけると、更新特典による解約抑止効果はさらに高まります。

どんなに特典が魅力的でも、既に引っ越しの算段を始めている入居者を止めるのは至難の業。春の更新ラッシュに先手を打てるよう、この秋から更新時の入居者プレゼント計画を始めてみてはいかがでしょうか。